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2013年2月

2013/02/06

円滑化法期限切れ【中小企業は日本経済の支柱_荒波乗り越えチャンスを切り開け_よりしなやかに強靭に!】(1)

中小企業金融円滑化法の期限が3月末に切れる。再再再延長はあり得るのか?!という議論はついこないだまであったが、もう完全に無くなったのだろう。

 今年1月終わりから『円滑化法は終了します』との前提でNHKや新聞が報道し始め、いわゆる円滑化法期限切れ問題『対策』が報道され始めたからだ。

中小企業支援の専門家(弁護士)として目が離せない。

 法律家から見ると、円滑化法の終了は、今まで金融機関に中小企業からのリスケ要請に応じるようとの努力義務を課していた圧力(かなり強力だった)が外れるという意味にとれる。

 今までリスケをしてきた中小企業から見れば、実現性ある経営改善計画を提出しなければ引き続き返済猶予に応じてもらえないことを意味し、一方、金融機関から見れば正常債権として取り扱えていたリスケ債権を、経営改善計画や調査を踏まえて個別に要管理先、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先の『不良債権』として評価し、自己資本比率規制に従い金融機関自身のバンランスシートに反映しなければならないということだ。

 この中小企業金融円滑化法が成立した2009年9月末、私が主催する日本企業再建研究会の税理士の仲間らと、通称モラトリアム法だなんて問題の先送りなんじゃないかと議論したのが記憶に新しい。

 

だが、実際は、その当時既に、「我社は未曽有の世界的大恐慌であるリーマン・ショック以降、業況が悪化の一途を辿り、、、」という枕詞から始まる事業計画を作っていた企業は多かったはずで、土下座して泣いて頼んだとしても返済条件を緩和してもらえる状況ではなかったから、弁済を猶予してくれる円滑化法は、多くの中小企業(420万社ある中小企業のうち30~40万社がリスケを活用したという統計が出ている)にとって涙が出るほどありがたい立法であったことは間違いない。

 期限切れ後の世界では、5万~6万社が「経営改善・事業再生・業種転換等」が必要になると発表されている。これは、言い換えれば、更なる費用削減、リストラ、債務整理、事業売却、廃業、という意味に他ならないものと理解している。

 残りの30数万社と、融資可能性を残しリスケの恩恵を受けずに踏ん張り続けた企業に対しては、最近明らかになってきたFUND(ファンド)、ABL(動産・債権担保融資)、DDS(負債の劣後化/資本性借入金)、DES(負債の株式化)といった中小企業金融には聞きなれない横文字の目立つ再建手法を政府が後押しするという理解だ。

 ただ、政府の支援策を活用する場合、特にファンドに買い取ってもらった債権を放棄してもらう場合や、ファンドに出資してもらう場合(ファンドや債権者が株主になるという意味だ)には、定期的な事業報告、人材の送り込みによるキャッシュフローのモニタリングは、政府のお金を出して貰う以上仕方あるまい。

 去年春、再再再延長はないとの金融大臣の発表後、明らかにされてきた5万~6万社といった大量倒産の危機的状況は(ここ何年かはいわゆる倒産件数は年1万数千社であるから危機的と言っていいだろう)、20年も続けたデフレに追い討ちをかけるから、政府は本当に潰す気なのか、正気か、と震撼し、動向に注視してきた。今回の発表は、ようやくの感あり、である。

安倍内閣は、中小企業を見捨てはしなかった、とは思う。

 もっとも、それを頼りにするのかしないのか、となれば話はまた別である。

中小企業における経営権の意義を如何とは何か、政府の支援策とは別の道を歩むことこそが真の事業再生となることもあるだろう。

 政府の打ち出す再建手法が明らかになり情報が氾濫しはじめた。これに埋没することなく、依頼者に合致する再建・強靭化法を編み出すのが当虎ノ門国際法律事務所に与えられた使命なのだ。と気持ちを新たにした。

 

【中小企業は日本経済の支柱_荒波乗り越えチャンスを切り開け_よりしなやかに強靭に! 弁護士後藤孝典】

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2013/02/06

円滑化法期限切れ【中小企業は日本経済の支柱_荒波乗り越えチャンスを切り開け_よりしなやかに強靭に!】(2)

参考資料 (1)

(株式会社東京商工リサーチ 記事国内407金融機関(2012年9月末時点)「中小企業金融円滑化法」に基づく返済猶予の実績調査 公開日2013.01.21)

http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/2013/1224955_2164.html

より一部抜粋)

 

中小企業金融円滑化法は、30万社~40万社の企業が活用したと推定される。このうち金融円滑化法の終了に伴い支援が必要となる企業は5万社~6万社とみられる。しかし、業績改善が進まず再建計画と大きく乖離している企業や、1年以内に策定しなければならない実抜計画を作成できない企業も多い。金融機関は、再建が見込めない企業には資産売却や廃業も視野に入れた対応をする一方で、企業側も問題点を見直し、業績改善や経営立て直しに改めて取り組まなければならない時期にきている。

 

(平成25年2月4日(月)日本経済新聞 夕刊 第1面 記事 下記枠内、傍線後藤孝典)

 

中小向け出融資枠 1兆円
政府、円滑化法終了で対策 資金回収を監視も

 中小企業の借金返済を猶予する中小企業金融円滑化法が3月末に期限が切れるため、政府は激変緩和の支援に乗り出す。中小企業の再生を支援する公的機関の出融資枠を2013年度に3倍の1兆円に拡大するほか、総額で2000億円規模の再生ファンドを育てる。強引な資金回収がないか監視も強める。公的支援を拡充し、中小企業経営の軟着陸を目指す。

 12年度中に、日本航空の再生を手がけた企業再生支援機構を改組し、地域経済活性化支援機構をつくり、政府の再生支援の中核的な組織にする。同機構が低利で資金調達できるように政府の保証枠を拡大する。中堅・中小企業の再生を支援するための出融資枠を旧機構の3000億円から1兆円規模に増やす。

 支援対象として想定されるのは、独自の技術やサービス、商品を持ちながら業績が低迷しているような地域の中堅・中小企業。機構が出資で信用補完し、民間金融機関の融資を引き出しやすくする。そのうえで、販路拡大や新商品の開発、業務提携などの経営ノウハウを提供し、潜在的な競争力を持つ中堅・中小企業の稼ぐ力を高める。

 円滑化法で借金の返済猶予を受けた企業の経営再建はほとんど進んでいない。中小企業の競争力をいかに引き出し、安定した経営基盤をつくれるかが課題になる。

 中堅・中小企業の借金返済を軽減するために金融機関から貸出債権を買い取ったり、返済の必要がない出資金を拠出したりする民間の再生ファンドも後押しする。同機構は12年度補正予算に盛り込まれた30億円を原資にファンドに資金拠出。公的機構が率先して出資することで民間資金の呼び水となることを狙う。1ファンド当たり全体の1~2%分を出資し、総額2000億円程度の規模に育てる。

 13年度の税制改正大綱にも中小再生を支援する措置を盛り込んだ。金融機関だけでなく、再生ファンドも中小企業への債権を放棄しやすくする。

 中小再生の現場を担う地域金融機関の対応にも目配りする。金融庁の監督・検査の指針に「条件変更の申し出に柔軟に応じる」といった項目を追加する。全国の財務局に窓口を設け、中小企業の意見や苦情を吸い上げ、強引な資金回収をするような金融機関がないか監視する。

 金融機関には、中小再生支援の取り組みを定期的に開示することを義務付ける。企業再生の専門家や専門部門といった体制を整備しているか、再生の成功例や実績などを決算報告書などに明記させる。借金の返済猶予の申込件数と実行件数の報告を続けるよう金融機関に要請する。

 

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2013/02/06

事業承継民間紛争解決センターでの和解は、本当に大丈夫なのか?裁判所で決定される判決や和解と同等に扱われると考えても良いのか。

 裁判や裁判所の和解においてもなかなか一度生じた紛争を解決するのは大変なのに、民間で紛争解決なんて出来るのか? 

 

なんの権威もない民間で事業承継の様な複雑な感情や利益、正義がまぜこぜになった問題を弁護士の集まりで解決できるのか? それに紛争を起こした双方が従うなんてことが出来るのか?

 

これが、事業承継民間紛争解決センターなんて事を耳にした大方の皆さんの反応であると思います。

 

しかし出来るのです。なぜか? それは現在の日本の裁判制度が完璧に機能しているからです。

 

なにを馬鹿なことを言っているんだ、裁判制度が完璧に機能しているのなら、何も民間でやることはないのでは? 

 

民間に出来ることは民間でなんてやってきて、何もすべてが良かったわけではない。 国の権威でもってやった方が良いことはいくらでもある、その最たるもんが裁判制度ではないか。

 

特に刑法に関してはその通りです。しかし民事に関しては、少し問題があります。近来、特に複雑になってしまった会社法、そこへ複雑に絡み合う税法があります。

 

裁判に関われば関わるほど、裁判官の特に税務・会計に対する無理解に困り果てる問題が多々あります。あまりにも事業承継に付随する問題が複雑に絡み合い専門にこの分野を理解出来る裁判官の数が少なすぎます。

 

かえって、鎌倉時代の民事訴訟法である「所務沙汰」(御家人のための不動産訴訟)のように、訴人(原告)も論人(被告)も、自己の主張に法的根拠があることを「立証し」、これが本件を規律すべき法なのだと、法の存在を証明する必要があれば、良いのかもしれませんが、現在の高度で複雑な法体系においては、原告も被告もそれだけの時間と費用を割くことは出来ない。けれど、税務・会計を熟知する裁判官も少ない。

 

だからこそ、民間の事業承継を専門に扱う紛争解決センターが必要なんだと結論づける気は全くありません。

 

「会社法、税務、会計が分かっているから私たちにまかせなさい。」

 

こんな事を主張しても、合法的な権威や執行力を持たない民間の弁護士に、誰も会社の生死を決する和解判断をお任せしますとは思わないでしょう。

 

しかし、日本には、高度に整備された裁判制度並びこれを支える民主主義に基づく国家があります。事業承継の紛争が企業価値、事業価値を専門とする紛争解決センターで和解され、その和解結果を裁判所に持ち込めば即決で和解を追認してくれます。これには強制執行力も付随しています。

 

また、法律、裁判制度の確立している国家において、そこから逸脱するような和解案を出したとしてもそんなもの受け付けられない事は、民間紛争の当事者達にもよく分かっています。

 

現に裁判制度の確立し、発展した国であるからこそ、民間の紛争解決センターが機能するのです。

 

300年間の平和の中、近代的商取引と共に裁判制度が、発達していた江戸時代は、訴訟頻発社会だったようです。公事宿の主人や公事師のほかに、訴訟技術にたけた百姓の存在や、(公事宿の主人ではない)「扱人」の存在が知られています。

 

例えば、山形藩の大庄屋を務めた佐藤理兵衛は1709年に、訴訟の心得を和歌の形にして子孫のために残している。日常的に訴訟が多発する背景がなければ、子孫のために訴訟に対する対応方法を言い残すことはしなかったろうと思われます。

 

越後国水原代官所管内では、金銭貸借に関する訴訟、質入された土地に関する訴訟、庄屋の職務に関する訴訟など訴訟類型ごとに原告の訴状と被告の答弁書を例示する訴訟関係文例集というべき書物が広まっていたことが知られている(渡辺尚志「武士に[もの言う]百姓たち、裁判でよむ江戸時代」170頁。草思社)。訴訟が日常的に多発していたことを示す重要な証拠といって良いのではないか。

 

江戸時代の百姓にとって、自己に権利があり相手方に義務があると意識し確信するから訴訟をおこすのではなく、日々の生活に必要があるから起こすのです。

 

現代においても同様である。権利義務と言う観念による捉え直しは法律家の後知恵にすぎない。権利義務の観念は、すでに存在する法的紛争を整理し論理化するにつれて発達するものであるから、権利義務観念の発達とか緻密化に伴い訴訟が提起されやすくなることも本当であるといえるが、権利義務の観念ないしは意識が発達したから訴訟が多発するようになったとはいえない。

 

訴訟の提起は、その時代の権力によって自分の言い分が容認され承認されなければ毎日の生活とか生産活動が維持できないといった、現実的な必要性からなされるのだ。

 

特に、ヨコ承継(合併・買収、会社分割、事業譲渡)にしろ、タテ承継(相続)にしろ事業承継においては、なるべく迅速に自分たちの企業価値をはっきりさせなくては事業を続けていくことは非常に難しくなる。

 

企業・事業の価値判断、事業再生、事業承継を専門とする弁護士とその補佐をする税務・会計・特許・不動産の専門家による迅速な紛争解決を取り決め、裁判所による追認を受けるというこの民間弁護士によるADRは、いま、現実的に必要とされるものではないか。

 

国家も裁判所も民間の紛争解決センターを必要とする時代に入ったから、法務大臣認証制度が始まったのである。

 

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